電子書籍に関する最近の雑感
電子書籍に関する最近の雑感
先日「岩本・植村・沢辺の電子書籍放談」という記事を読んだのですが、大変面白くて色々思う事があったので、それらについてメモしておきます。抜けてる点があったらあとで書き足すかもしれません。
(元記事に書かれていることもあれば関係ない部分もありますが、基本的には「僕が思ってること」です)
需要について
- 電子で書籍を読む人たちは本当に多いのか? ニーズは本当に大きいのか?
- 今はたまたまデバイスを入手した人などが自慢するために(あるいは使い途を探して)電子書籍を含む各種コンテンツを探してるだけではないのか。
- ゆえに本当に必要があるわけではないので、コンテンツにお金を払いたくないと思ってるフシがある。
- もちろん、ごく一部には本当に欲しいと思っている人もいる。
ジャンルについて
- 電子書籍には向き不向きがあるのではないか。
- ジャンルについては僕も以前指摘している。
- 辞書など「調べるもの」は電子版がいい。ランダムアクセスだから。
- 地図、辞書、時刻表など。そしてこれらは既に電子化されてて市場が確立している。
- 文芸など「楽しむもの」は紙媒体でいい。シンケーシャルアクセスだから。
- 需要があるなら電子版を出してもいい。例えは携帯コミックは市場が確立している。
- 実用書など「学ぶもの」は紙と電子版がセットなのがいいかもしれない。
- 最初はシーケンシャルに読んで、読み返す時はランダムアクセスだから。
- 「学ぶもの」で図表が重要なものは、当然レイアウトも重要になる。
- ゆえにリフローは向かない可能性が高い。電子書籍よりアプリ系に向いてるのではないか。
- 「学ぶもの」でもレイアウトのない新書等はアリ。この領域はマーキングやメモ機能等が重要になりそう。
レンタルについて
- 米国にはCDレンタルがないけど、日本にはCDレンタルがある。だから米国ではiCloudにOKが出せたけど、日本ではOKが出せないのではないか。
- 「CDレンタル廃止にしたらiCloudをOKにするよ」と言われて今からCDレンタル廃止できるのか?
マルチメディアについて
- 出版社は「1000万円も」かけてマルチメディアな電子書籍コンテンツを作るけれど、(マルチメディアな)ゲームは何倍もかけて作ってる。
- 出版はそもそもコストが小さいところで廻している業態なので、コストをかける必要があるマルチメディアはそもそも向いていないのでは?
編集について
- 編集はブランド、カラー、イメージ。
- キュレーションって編集じゃないの? あるいはプロデュース。
- わざわざ新しい単語を作る意味ってないんじゃね? バズワードを持ち出すやつはあまり信用しない。
- ちなみに僕は2004年~2005年くらいに「これからはネット編集の時代だよね」的な事を書いていた。
- 編集(あるいは出版)は、「面白くて価値があるもの」を他人に提示すること。
- 制限があるからこそできる表現もある。
- 小説をマルチメディア化するのであれば、最初から映像作品を作ればいいじゃない、的な。
- デジタル=リッチ化じゃないよ。例えば携帯小説は文字だけだ。
マネタイズやビジネスモデルについて
- お金をもらうのは難しい。
- 携帯小説やネットにある文章でお金をもらおうとすると紙の本にして売るという既存のビジネスモデルを使うしかない。
- 逆に、電子書籍がビジネスとして廻っていれば参入するはず。実際、携帯コミックはそうなっている。
- ビジネスモデルを新しく作るのはすごく大変。
- 無料で提供し続けるのは本当にいいのか分からない。
- どのようにして利用を円滑にするか。
- 「電子書籍」の定義に「有料パッケージであること」を入れた方がいいのではないか。
雑誌について
- 雑誌は知りたくないものも教えてくれる。検索(あるいはネット)でそれは難しい。
- 僕は興味のないものを知りたい話を何度も書いている。が、未だにネットで実現される気配すらない。
- 知識体系を知るのはネットより本(雑誌、書籍)のほうが向いているかも?
- ネットでは知識の体系より情報の断片が重視されている(あるいはそれしか見えない)。
- そういや雑誌はコミュニティを形成してたはずだけど、現状どうなっているんだろう?
読者とユーザーの違いについて
- 本(著作物)を「読む(読者)」のか「利用する(ユーザー)」のか。
- 本(著作物)の「利用」とは、本来的には「出版する」とか、あるいは「映像化」などの二次利用だったはず。
- 配信なら「配信元」が利用者になるはず。
- 電子書籍では読者が「ユーザー(利用者)」を名乗るようになったりしてる。そこに齟齬があるのではないか。
- 「読む」のは基本的には自由だけど、「利用する」のは制限があって当たり前だから。
- また「読者」に比べて「ユーザー」は本(著作物)に価値を感じていないように見える(だから対価を払おうとしない)。
- 図書館は「利用してる」わけだけど、それをさらに他者に提供するあたりに齟齬がありそう。
- 最近の図書館は図書館の本質を忘れているのでは? 的な。少なくとも「ベストセラーを読ませる」のは違う(無料貸本屋ではいけないはず)。