電子ブック端末を買うのは誰だろう?

電子ブック端末を買うのは誰だろう?

 電子ブック端末は一定数の需要がある――例えばポメラと同じくらい――とは思うのだけれど、ネット世間で騒がれているほど日本で売れるのか、どうもよく分からない。

 アメリカで売れてるらしいって記事はみかけるけど、どんな層にどういう風に売れてるのか書かれてるのを読んだことないしね*1

 そもそもアメリカで売れてるのは出版流通事情が日本より悪いらしいとか、Amazonが電子ブックをダンピングしてるからじゃないかって気がしてますし。

 Wikipediaによると*2アメリカの書籍は一般に27ドル程度らしい――値引きがあると思うので実際には22ドルくらいなのかな? Kindleが260ドルであれば、書籍12冊程度の価格ってことだ。しかもAmazonは10ドルでダンピングしてたから、20冊くらい買えば元は取れる計算になる。

 それに対して日本の書籍は800円程度らしいので*3キンドルが24,000円であれば30冊分に相当する。仮にAmazonが半額(400円)でダンピングしたとして、元を取るには60冊買う必要がある――というくらいアメリカと日本では前提が違っているのに、どうも無視されてる気がするんですよ。

 そんなわけで、日本で電子ブック端末を買うのがどんな人なのか想像してみた。

新しいガジェットならなんでも買う人

 新しもの好きは買うよね、きっと。今回は「流行ってる感」が今までよりあるし。

 でも電子ブックは最初に数冊適当に買って、その後は放置になりそうな気がする。

蔵書をため込むのが好きなコレクターで、置き場がなくなった人

 こういうタイプの人が欲しがっているのは分かる*4。ずいぶん前から本を解体して電子化してる人も知ってるし。

 この手の人が求めてるコンテンツ(電子書籍)は「全集」みたいなものじゃないかな。コレクターだし。

 漫画は巻数が多かったりするので、シリーズものはセットで販売されるとありがたいですね。

(ちなみに、買い直すのは障害にならないと思います。愛蔵版とか文庫版を買ってる人は、以前の単行本を買ってた人も多いでしょ?)

 コレクターとして気になるのは端末の快適さでしょうか。昔の電子ブック端末は快適じゃなかったし。

 その点で現在の端末の動作パフォーマンスはよくなってそうな気はするけど、解像度(dpi)の面が気になるところ。

 また、縦書き・ルビ・外字がちゃんと表示できるのかも気になりますね*5

 PDFみたいなフォーマットなら表示できそうな気がしますけど、その場合はフォントの拡大とかは調子が悪そうな予感がします*6

 あと、日本向けには漫画を見開きで表示できるのが必須でしょう。その辺がどうなるのかは気になるところです。

絶版書籍の入手を希望してる人

 要するに「売れない本が欲しい」という希望ですから、単価は高くなっても買います……よね?

(どうもそのへんが分からない)

 単価が多少高くなっても売れるんなら電子ブックとして再刊されていくと思うので、マイナー本を希望する人は値段を気にせずどんどん買っていきましょう。売れることが分かれば復刊ドットコムも活動しやすくなるでしょうし。

 ――あれ、でもこれは別に電子ブック端末がなくても、ダウンロード販売さえしてればいいはずだよね。あるいはオンデマンド出版でもいいはず。

 そもそも絶版書籍の入手を希望してる人たちは既存のダウンロード販売についてはどう思ってるんだろう。今は「希望する書籍がないよ!」ってだけで、希望する本がダウンロード販売していれば端末がなくてもちゃんと買うんだろうか。

書籍の値段が安くなるのを期待してる人

 そんな人が2~3万円もする電子ブック端末を買うとはあまり思えませんし、元を取るのに相当の冊数*7を買う必要があるので、安価な書籍を望んでいる人が電子ブック端末を買うような気はあまりしてません。

 ……あ、いちおう出版社も読者も納得するかもしれない「安価で売る」アイデアはあるんですよ。漫画雑誌のケースですけど。

 1年契約で紙媒体の半額、ただし読めるのは2~3ヶ月――という形で配信するのはアリなんじゃないですかね? 500円の月刊誌なら3000円/年くらいで。

 漫画雑誌は基本読み捨てですし、バックナンバーをひっくり返すくらいなら単行本買いますし。僕は上記の条件なら定期購読すると思います。

 出版社としても漫画雑誌そのものは利益が出てない――というか印刷費のことや年間購読してもらえることを考えると半額でも充分ペイできる可能性はあるんじゃないかな? 的な。

 とはいえ、これで端末の元をとるには8~10誌くらいの漫画雑誌を買ってる必要があるのですけれど*8。3万部以下のマイナー誌ならやってもいいんじゃないのかなー、みたいな*9

 あとは漫画が読みやすい電子ブック端末が出てくれるかどうか、ですけどね……。

追記(2010-01-28)

b:id:mohno 浅倉卓司, 書籍, 電子出版, Kindle これだと「ガジェット好き」以外はパソコン用の電子書籍が解決するので、「書籍をまとめて(仮想的に)持ち歩きたい人」向けだと思う。http://b.hatena.ne.jp/mohno/20100125#bookmark-18687966

 あ……確かに「ガジェット好き」以外は「電子ブックを買う人」であって「電子ブック端末を買う人」になってないですね。

 というわけで以下2つを追加します。

(ちなみに、以下の理由によりiPadは「電子ブック端末」としてはイマイチだと思っています*10。もちろん、ケータイ等で電子ブックを読む人がいるように、iPadで読む人もいるでしょうけれど)

発光型端末で読みたくない(反射型端末で読みたい)人

 PCやケータイなどで読みたくない理由の1つに「発光型なので長時間見ていると疲れる」ってのがあると思います。少なくとも僕はそうです*11

 昔はあまり気にしてなかったんですが、ポメラを使ってて「反射型液晶いいなー」と思ったんですよ。文章をずっと見続けても疲れないので、PCで長文を打つより快適だったりしますし。

 たまに「ポメラをドキュメントリーダーとして使いたい」って意見を見かけるのですが、その意見はよく分かります。

 なので、ちゃんと(長時間)読む時は反射型端末のほうが快適だから、反射型である電子ペーパーを使った電子ブック端末で読みたいと思ってる人はそれなりにいるような気がします。

 最近は発光型デバイスばかりで反射型のよさを知ってる人は少ない気がするので、反射型を見る機会が増えればこう思う人は増えるかもしれません。

バッテリー残量を気にしたくない人

 これもポメラを使っていて気付いた点ですが、バッテリー残量をほぼ気にしなくていいのはとても快適です。そもそも紙媒体はバッテリーなんて気にしなくていいですしね。

 PCやケータイだとちゃんと充電してないといけないのが面倒なんですよ。その点ポメラは充電のことを気にしなくていいので気楽に使えます。

 これはやっぱり乾電池で使えるってのが大きくて、普段は充電池(エネループ)を使っているのですが、スペアの乾電池を持っていれば(あるいはコンビニで買えば)充電池が切れた時にすぐに交換できるのがいいのです。乾電池で使ってる間に、どこかで充電すればいいですしね*12

 この点ではKindle(およびDX)もイマイチな気がしています。

*1:ずっと気になってるので是非とも教えて欲しいところ。そもそもAmazonが色々公開しないのはなんでよ? とも思うし。

*2:この記述が信用できるとして。

*3ここによると客単価が800円とのことなので、冊単価はもっと低い気はする。冊単価を下げてるのは漫画だろうけど。

*4:僕もコレクター気質があるから。とはいえ最近は岡田斗司夫の言うとおり「溜めてもしょーがない」って気がしてますが。

*5青空文庫フォーマットを縦書きルビ付きで表示できるくらいにはちゃんとレンダリングして欲しいものです。

*6:PDFはルーペ的な拡大はできても、文字を大きくして組み直しはできないと思うから。

*7:上記の試算では60冊くらい。

*8:1年で元を取る計算で。……昔はそれくらい買ってた気がする。

*9:今は5誌くらい買ってるので、それらが全部上記みたいな売り方をしたら電子ブック端末買って契約するような気はする――カラーページがかなり残念になりそうだけど。

*10:これについては本田さんも指摘してました

*11本田雅一さんもそうらしいですね。

*12:電池の持ちを考えると、乾電池のみで使ってもいいかもしれないくらいです。