電子ブックの優位性ってなんだろう

電子ブックの優位性ってなんだろう

 電子ブックは紙媒体に対して優位性(利便性の向上)が必要だと思うんだけど、それはなんだろう。ちょっと考えてみた。

収納スペースが小さくて済む

 これを筆頭にあげる人は多いと思うし、これは間違いないんじゃないかな。

 だから僕は全集とかシリーズものの全巻(あるいはそれに近い形の)セットを出すのがいいと思ってるんだけど*1、現状は紙媒体の単行本をそのままリリースしているものがほとんどなんですよね……。

 これはおそらく再編集の手間をかけたくないからだと思うのだけれど*2、だったらセットにしてちょっと値引きする――みたいな売り方もあってもいいんじゃないのかな。決済手数料を考えると少額よりまとまった金額で決済してもらったほうがいいはずですし*3

 問題は収納スペースに悩んでいる人がどれくらいいるか、ってことでしょうか。不要なものを処分することで得られるものもありますしね。

文字を好きな大きさに変えられる

 文字の大きさを変えられる(特に大きくできる)のは紙媒体に対する大きなメリットでしょう。

 歳をとって本を読まなくなる理由の1つが「老眼のため小さい文字が読みにくくなるから」という噂も聞きますし*4、だとすれば文字を好きな大きさに変えられる電子ブックは必要とされてる可能性はあります*5

 文字を大きくするといっても部分的な拡大ではなく、文字の大きさに合わせて読みやすく整形する「自動組版」が必要でしょう。

 これは縦書きやルビなどに対応しているべきですし、できれば段組も扱って欲しいし、電子ブック端末を縦でも横でも使える*6ようになってる必要があるでしょう。

 現在のDTPは自動組版に対応できるデータを出力できないらしく、自動組版できるデータを作るために現状はそれなりの労力を使っているようです*7。こちらについてはそのうちInDesignプラグインか何かで対応できるようになるのかもしれませんけれど。

 ちなみにPDFは文字サイズのコントロールができないので、この点に関してはイマイチだと思ってます。

(もともとページ単位で作成されている漫画はまた別の話ですが)

検索性の高さ

 電子ブックに付箋を付け、そこにメモ書きができて検索できるとかなり利便性があがります。現状でも本に付箋を付けたりページの角を折ったりしてるのですが、メモの内容(付箋を付けた理由)は検索できませんからね。

 同じ理由で、マーキングできると良いかもしれません。

 ちなみに僕は本文の全文検索はあまり必要だと思っていません。「必要な情報がその本に書かれているか」を知りたいのであれば、司書にレファレンスしてもらったほうがいいと思ってますから。

 あるいは、目次と索引を検索できれば目的は達せられますし。とはいえ今の本は索引が充実していないので、それを充実させる必要はありますけれど。索引を作る手間をかけないために全文検索で誤魔化す方向なのかもしれません。

レンタル書籍の購読

 以前の電子ブックが失敗した理由に「レンタルだった」という点がよくあげられてるみたいですが、「書籍のレンタル」って悪くない発想だと思うんですよ。

 そもそも読み終わった本をすぐに古書店に売るのは「事実上レンタルと同じじゃない?」って話はたびたび出てますしね。そういう需要はあると思うのです。

 レンタルを前提とすると電子ブックは紙媒体よりも

  • 貸し出し待ちがない
  • 返却不要
  • 本が傷まない

――という点で利便性が高いですしね。

 問題があるとすれば、レンタルを使う人は「安く読みたい」という要求が強いでしょうから、そのために高い電子ブック端末は買わないだろう、ってことでしょうか。電子ブック端末を安価でレンタルするとかすれば解消できる可能性もありますが……これはちょっと分かりません。

 またレンタル料は100~300円程度に抑える必要があると思うので*8、それを出版社が許容できるかどうかが気になるところです*9

 そうそう、レンタルして気に入ったら「差額で購入」できると良いと思うんですよ。

 「買った→読んだ→気に入らなかったので売った(気に入ったので売らなかった)」というフローから「借りた→読んだ→気に入ったので買った(気に入らなかったので買わなかった)」というフローになるには、差額で購入できることが必須なんですよ。差額で購入できないと「借りた→」フローのほうが高くつきますからね。

 差額で購入できるようになれば「買った→」フローと「借りた→」フローの支出が同じになって、「気に入ったから手元に残そう(買おう)」と考えやすくなるんじゃないでしょうか*10

 これは「新規需要の掘り起こし」になるので、悪くないアイデアだと思うのですけどね。

 僕だったらアタリかハズレか分からない本でも200円くらいなら出しますし。通常のレンタルだとアタリの時に余分な出費になるのがイヤなんだけど、差額で手元に残せるならそれも気になりませんしね。

 どっかでやらないかなぁ*11

 ――なんか長くなったので、とりあえずはこんなところで。

*1:出たら買ってもいいと思ってる作品もあるし。

*2:数が売れないからそんなコストはかけたくないってのは分かるけど。

*3:販売サイトが値段を決められるのであればそういう売り方をすると思うけれど、現状でそういう話は聞かないし。

*4:実際はどうなんだろう?

*5:ちなみに教育現場でも有用だそうです。

*6:あるいはPCならウィンドウのリサイズに合わせる。

*7:そして労力を回収できるほどは売れていないのが現状だそうな。

*8:ちなみに既存の漫画のレンタルをちらっとみたら、やっぱりこれくらいだった。1冊単位じゃなくて10~20冊くらいのセットだったけど。

*9:前回のレンタルが不評なのは、「レンタルだから」ではなくて「レンタルなのに高い」からだと思うしね。

*10:理想を言えば、最後の「買う」で電子媒体か紙媒体かを選べればよりよいでしょう。

*11:ポッド出版の方に意見を聞いてみたいところ。