漫画の自主規制の歴史を振り返ってみよう。
漫画の自主規制の歴史を振り返ってみよう。
憶えている範囲でザックリと。
(『マンガ論争勃発』ほか、専門書籍を読んだほうが正しい事が分かると思いますが、いちおう)
追記:『マンガはなぜ規制されるのか』(長岡義幸/平凡社新書)が大変お薦めです。
1990年以前は
- ワイセツ物(違法なもの)
- 一般図書
――という区別しかなかったはず。
でまあ、例の事件やらなにやらでいろいろあったらしく
当時は規制を強化しようという運動が盛んであり*1、1991年ごろには
- ワイセツ物(違法なもの)
- 成年マーク ←New!
- 一般図書
――というマークができて、「未成年には売らないようにしよう」という自主規制をする書籍ができてきました。
当初は単行本のみで、雑誌で「成年マーク」が付く事はなくて、そのぶん消しが濃かった(大きかった)気がします。その後連載が単行本化される時に消しがやや薄くなるという、近年のアニメパッケージみたいな事も多かったんじゃないかな?
ちなみに、ここでは1996年からマークが付くようになったと出鱈目な事が書かれていますが*2、実際にはもっと前です。残念ながら手元ですぐに確認できるのが『COUNT DOWN』(うたたねひろゆき/富士美出版)しかありませんが*3、奥付は平成4年7月5日――つまり1992年刊行のものには既に付いてます。僕の記憶ではもうちょっと前から付き始めてて、移行時期にはシールを張った単行本もありました。
追記:
そういえばソフ倫(コンピュータソフトウェア倫理機構)ができたのも1992年ですか。
この頃は漫画に限らず、エロ系に対する行政・警察の締め付けが非常に厳しかったような印象です。
それから時間が流れて雑誌にも付くようになって(これは美少女ゲーム雑誌絡みのほうが先だったかもしれない)*4、そういう雑誌ではかなり露骨な描写も増えてたような気がします――あれっていつ頃だったのかなぁ。1990年代末かな?*5 このあたりはよく憶えていません。
いずれにしても、成年マークが付いた書籍・雑誌は一般書とは離れたところに置かれていましたし*6、コンビニ流通はしていなかったと思います。
追記:
そういえば2000年頃から18歳未満のヌード写真等は販売が禁止されていますので、分類としては以下のようになるでしょう。
- ワイセツ物(違法なもの)
- 18歳未満のヌード写真等(販売禁止)
- 成年マーク
- 一般図書
――まあ、絵(漫画)は除くので、ここでは直接関係ありませんけれど。
しばらくはそんな感じだったのですが、たぶん2000年を過ぎた頃から「コンビニでエッチな本が売っている」のが槍玉にあがってきたんですな。それからいろいろありつつも、2004年くらいに未成年が立ち読みできないように、エッチな本にあたるものは封印シール付きで売られるようになりました。
当時はコストがかかるとか雑誌が売れなくなるとかで結構揉めていたような気がするのですが、それでも出版社側は自主規制という形で対応したわけです。
(ちなみにコンビニ側は「成人向け雑誌コーナー」という形で対応したみたいです)
でまあ、最近話題になっている条例案はこれらよりも酷く規制の範囲が広いですし、そもそも出版側との話し合いを持とうとせずに行政側がごり押しをしようとしているところが問題のような気がします。
(実際、過去には条例とは関係なく封印シール対応などもしているわけですから)
規制推進派が無茶なごり押しをせずに、出版側が納得できる(説得力のある)話し合いができれば、例えば
――みたいな路線もあり得るのかもしれません。
(相当揉めそうではありますが。それでも出版側が妥協・対応できる範囲であるような気はする)
それはそれとして。
今回の規制の話を聞くと「本当に条例案で規制推進派は満足できるの?」って気がするんですよね。だって「法に触れない・非倫理的でないけどエロエロな描写」なんて沢山あるわけですけど、彼らはそういうのも本音では規制したいんでしょ? 以前槍玉に挙げられてた松山せいじのマンガが問題視されたのは、法や倫理ではなく「エロい描写をしてるから」だったくらいですし。
そういう意味で今回の条例案は誰も納得しない――出版側はもちろんのこと、規制推進派も満足せずにさらなる規制を求めるだろう――という点で最低だと思ってます。
追記(2010-12-06)
『マンガはなぜ規制されるのか』(長岡義幸/平凡社新書)が大変よくまとまっていましたので、お薦めです。
読んでて気付いた点について、一部記述を修正・追記しました。
そういえばゲームの規制の歴史についてまとまっている記事はどこかにないのかな。
出版と違ってゲーム業界は基本的に行政・警察に対する意見などは言っていない(行政・警察のいいなりになっている)印象ではありますが、それゆえに行政・警察がいつ頃何を問題視していたのかがソフ倫などの規制強化の時期を見れば分かるような気がするし、それと出版物への規制強化の時期と照らし合わせると興味深いかもしれません。
追記(2010-12-09)
――とか書いてたものだから、「え、快楽天はコンビニ売りで成年(18禁)指定じゃないでしょ?」とか思ってコンビニまで行って確認しようとしたわけですよ*7。ところが最初に廻ったコンビニ2軒は封印シール付きの雑誌を扱ってなかったんですな。
仕方ないのであちこち廻って確認してみたわけですが、取り扱ってないコンビニは結構あるし、取り扱ってても昔に比べて数が激減してました。
(そういう意味で「コンビニの雑誌売場が酷い」というのは言いがかりの可能性もありそうです。あるいは、具体的にどれが酷いのか例を挙げるべきですね。よく引き合いに出される「チャンピオンREDいちご」はコンビニ売りしてないと思いますし)
ちなみにコンビニ売りの出版物が激減しているそうですが、その原因の一部は「エロ系雑誌の取り扱いが減ったため」じゃないでしょうかね(さすがにそれだけでここまでの落ち込みにはならないとは思うけど)。
昔に比べて女性向け雑誌(おそらく付録付きのもの)と、コンビニコミック(あれって正式名称なんでしょ?)の取扱量は増えてる印象なのですけどね(そうでもないのかな?)。
*1:当時の件についてはなんの資料を参考にするといいんだろ。追記:『マンガはなぜ規制されるのか』に詳しく書かれてました。
*2:追記:1996年は雑誌にマークが付くようになったそうなので、そちらと勘違いしている模様。
*3:どうでもいいけど、この本ISBN付いてなかった……。雑誌コードは付いてたけど。ISBN付きで見つけた一番古いのはこれで、1994年だった。1990年のには付いてなかったけど、手元にないのよね。1987年のは見つけたんだけど。
*4:追記:美少女ゲーム雑誌というよりは、エロ系雑誌の附録CD-ROMに対する規制強化だった模様。もちろんゲーム誌も「TECH GIAN」等、CD-ROMを付けるのが増えていたわけですが。
*5:追記:どうやら1996年とのこと。
*6:実際にどう配置してるかは書店によるけど。
*7:確認した結果は、やはり「快楽天」は成年(18禁)指定ではありませんでした。封印シールは付いてるのでいわゆるグレーゾーン雑誌ではあります。