プロフェッサー竹村のIT的「スローライフのススメ」

プロフェッサー竹村のIT的「スローライフのススメ」

 われわれの大多数にとって、現在は、昔に比べて幸せになっただろうか? パソコンや携帯電話、インターネットやEメールがなかった頃に比べて、友人や、家族、恋人と話す時間が増えただろうか? 残業が減り、子供とのコミュニケーションタイムや愛犬と遊ぶ時間は確実に増えているのだろうか? 昔よりたくさんの本を読んでいるだろうか? 毎週リアルタイムで見ていたテレビドラマは、DVDレコーダーの肥やしになってはいないだろうか?プロフェッサー竹村のIT的「スローライフのススメ」

 竹村譲氏の「幸せ」が

  • 友人や、家族、恋人と話す時間
  • 子供とのコミュニケーションタイムや愛犬と遊ぶ時間
  • 昔よりたくさんの本を読んでいる
  • 毎週リアルタイムで見ていたテレビドラマ

――であることは分かるけれど、他の人の「幸せ」が上記であるとは限らない。

 あるいは上記を含めた「自分で好きなようになる時間」、すなわち「余暇」が増えると幸せになると言いたいのかもしれないけれど、そんなことが「幸せ」とはちょくせつ関係ないことは、例えばハローワークにいる人々に質問すれば分かることだ。

 他にも「スピードが速くなる=時間が余る、暇ができる」という短絡的な思考を展開する点も気になる。竹村氏は

 だれがIT技術を使ってわれわれ自らが創り出したはずの「時間」を、食べてしまっているのだろうか。それは本来、個人個人の「余暇」という名の猶予時間として還元されるはずのものだったのだ。*

と語るが、「IT技術により個人の余暇がふえる」などと誰が言ったのであろうか。少なくとも「会社」あるいは「社会」はこのようになると宣言したことはなく、これは単に竹村氏が勝手にそう妄想していただけではないのか。

 逆に「会社」が「余暇は増えない」と宣言している証拠は存在する。例えばたいていどの会社にも「就業時間」についての規則があるが、これは「最低でもそれだけの時間を働け」=「余暇が増えることはない」という宣言にほかならない。

 あるいは、例えば個人商店であれば「お店を開いている期間」により時間は拘束される。

 本当に「余暇」が増えて欲しいのなら、「お金持ち」になればいい。少なくとも現代では「個人の時間」はお金で買える*1

 世界で有数の「長寿国」である日本は、同時に世界でもワーストの「自殺国」の一つでもあるのだ。IT業界が驚異的な伸びを示した時代と時を同じくして、毎年のように増え続ける自殺者の数は、決して無縁なモノとは思えない。*

 「思えない」のは勝手だが、実際に検証もなしにいかにも関連があるようにかくのは如何なものか。

 「不況と自殺」の関連を説いたほうがまだしも説得力があるように思えるし、それが正しいのであればたまたま現在の不況期と「IT業界が驚異的な伸びを示した時代」が一致しただけであろう。

(ちなみに日本が世界でワーストの「自殺国」であるのは、不況やITとは関係ないと思われる*2

 文章の内容の無さやタイトルに「スロー○○」*3が付いていたりするところをみると、どうやら竹村氏はマーケ屋のようなので、論理的に反論するのが馬鹿なのかもしれないけれど。

 もう少しまともなモノを掲載して欲しいものです。>ITmedia編集部

*1:この指摘は養老孟司氏の著作による。検証した結果、確かに時間はお金で買えた。

*2:「死の壁」にも書かれていたかな?

*3:昨年くらいからマーケ屋さんで流行っている、らしい。