「ePubのいいところはHTMLとの親和性」なのだとすれば、それは「ウェブの書籍化」には向いてるかもしれないけれど、「紙媒体の電子化」には向いてないよね。
「ePubのいいところはHTMLとの親和性」なのだとすれば、それは「ウェブの書籍化」には向いてるかもしれないけれど、「紙媒体の電子化」には向いてないよね。
「ePubで充分」的な言説をたまに見かけて不思議に思っていたのですが、それらの方々が「デザインはHTML+CSSで充分」と思っているのだとすればそれは単に無知で言っているだけだから仕方ないと思うようになりました。
ただ、現実には紙媒体のデザインとウェブデザインは全く違うものだし、紙媒体のデザインを電子化するにはePubでは不十分であることを知って欲しいと思います。
例えば、同じ絵を描く仕事でもイラストレイターと漫画家とアニメーター*1が一緒じゃないのと同じです。それらの区別が付かない人がいるのは仕方ないとは思いますが、そういう人が何かを主張しても「勉強してから出直してこい」と言われて終わりでしょう。
それから、「ePubで充分、中間フォーマットなんて不要」って言うのは、「.jpgで充分、.PSDなんて不要*2」って言うのと同じだと思うのですが、その辺についてはどう思ってるのかも気になります。
そういうファイルフォーマットを気にする人がそんなずさんな主張をするとは思えないので、単に制作についてあまり知らない人が主張しているのだとは思いますけれど。
追記(2010-09-25)
実を言うと私は、
なぜデジタル本が「Webとの親和性」を気にせねばならぬのか、
そこから分かりません。
ハイパーリンク的なことを意図しているなら、
PDFでもリンクは貼れる(注やら、目次から本文へ、外部Webへetc)のは
PDF読んだことのあるひとなら分かるはずなので、
このへんが論点でもないだろうと思います。
やはり最終的には、
「少なくとも今現在の出版工程と、論理マークアップは、かけ離れすぎている」
(ただし私が現場にいたのは2005年まで)
と、
「デザイン自体が紙とWebではまるで違う」
に尽きるなあ、と思うです。
確かにそうですよね。
僕もよく分からないのですが「ウェブを書籍化」したいのであれば親和性を求められるのかなと思います。ただ、少なくとも現状では「ウェブを書籍化しよう」なんてことを考えている人はウェブ系ニュースサイト等も含めて全く考えてないみたいですし。
「デザイン」については考えていましたが、「出版工程」についてはあまり考えていました。
言われてみれば紙媒体は「最終的な出力さえ正しければよい」的な発想で作られている気がしますし*3、その点は今後も変わらないんじゃないでしょうか。今後もフィルムで修正とかするでしょうし――今はもうフィルムとか使ってないのかもしれないけど。
b:id:ageha0 [わしもそーおもう。] 印刷の発明と近代的な本の誕生の間には1世紀ほどタイムラグがある。その間は、写本を生業とする修道僧の技を活かし、豪壮な書写本を模した印刷本(インキュナブラ)で埋まっている。速度は違うにせよ似た動きはある筈。 [2010/09/23]
なるほど。現状だとPDFが「紙媒体をそのまま電子化したもの」に近い気がします。
(また「なんでPDFじゃダメなの?」という問いに対する明確な回答を見た事もない気がします)
b:id:vantguarde [thought] 「充分」→「他はいらない」っていう考えかたなのかしら。 [2010/09/24]
少なくともそんな感じの主張を見かけることはあります。
b:id:forestk 「ウェブ媒体」とか「紙媒体」とか一括りにしちゃうところから、どうにかした方が良い [2010/09/24]
確かにそうです(以前に「電子ブックのあるべき姿はジャンルごとに違ってる。」とか書きました)。
ただ「デザイン」については紙媒体とウェブでは全く違っているので(見た目じゃなくて考え方から違ってる)、そこは括っても問題ないと思っています。
追記(2010-10-01)
ジョバンニ
結局WEBとの親和性云々は結局タグ付きテキストの表現力に帰着するのでないですかね。
構造化されたテキストであればタグ付きテキストで表現するのはよい方法だけれど、現実の文章はそんなに構造化されたものばかりではない。画像のレイアウトなども構造化されにくいものの一つ。PDFが紙の書籍に近いのは構造の部分を取り去ってレイアウト情報に徹しているからともいえる。
同じタグ付きテキストの代表であるTeXが印刷物としてある程度成功しているのは手作業で行なえる以上の美しいレイアウトを最初から目指していたためで、そのために実時間でのレイアウトには向かない。
美しいレイアウトを目指さない今のepubの方向は単なる劣化デザインであって、それでもいいという用途のため(まあ、そういう用途は沢山ある)のものでしかない。
(※改行を追加させていただきました)
「現実の文章はそんなに構造化されたものばかりではない」というのはその通りだと思います。
さらにはid:ks1234_1234さんが指摘されているように、あるいは沢辺さんと深沢さんの対談でも語られていたように、紙媒体の出版の工程では構造についてはほとんど考慮されていませんので、「紙媒体をソースに電子書籍を作る場合」は基本的に構造化を前提としたタグ付きテキストとは相性が悪いんじゃないかという気がしています。
逆に比較的構造化されている(はずの)ウェブ系メディアが電子書籍を作るようになって、その中の売れ筋を紙媒体で出版するようになると状況が変わると思うんですけどね。
(構造化されてないのを構造化するのは難しいけど、構造化されているものにレイアウトをほどこすのは難しくないですし)
ただ、現実には(紙媒体の)出版社に批判的なウェブ系メディアも自らは全く動こうというはしてないわけです――要するに電子書籍なんて儲かるとも普及するとも本気では思ってないし、他人事だから面白おかしく煽ってるだけなんだろう、って気がしています。