米国のペーパーバック事情から日本の電子書籍を類推する

米国のペーパーバック事情から日本の電子書籍を類推する

 『ルポ 電子書籍大国アメリカ』を読んだのですが、日本の出版事情についてはほとんど知識がないにも関わらず決め付けで語っていたりするので*1、同書のアメリカの記述についてもどれくらい正しいのか眉に唾を付けて読む必要がありますけれど、興味深い指摘もいくつかあったので簡単に感想を書いていきます。

マスマーケット・ペーパーバックについて

 ペーパーバックについて書かれていたことで気になった点は以下の通り:

  • アメリカで売れ行きが落ちているのはマスマーケット・ペーパーバック
  • 紙質や装丁は非常に悪い
    • 日本の文庫本と比較されるけれど、全然違うもの
  • ハードカバーなどから落ちてくるペーパーバックの印税は通常より安い(6%程度)
  • ペーパーバックの売れ線はロマンスやSFで、これらが電子書籍で売れている分野
  • ロマンスは女性向けで、様々なサブジャンルがあり、大量に制作されている
  • ペーパーバックは保存されず、読み捨て
  • ロマンスを買う女性は購入内容を知られたくないため、電子版が売れている
  • SFもサブジャンルが多く、大量に制作されている

pp.026-037

 これらを読んだときにまず思ったのは「日本の漫画みたいだ」ってことです。

 紙質が悪くて読み捨てるペーパーバックはまさに日本の漫画雑誌みたいですし、ジャンルがロマンスやSFってのも、まあ似ている。

 そしてそれらが電子書籍として多く読まれているんだとしたら、これはまさに日本のケータイ向け電子書籍と同じように見えます。そう考えると、アメリカを参考にするよりは日本のケータイを参考にしたほうがいいんじゃないの? って気がします。

 実数などは書かれておらずあくまで著者の印象論でしかないようなのですが、もしアメリカで売れているものがこれらのペーパーバックなのだとしたら、やっぱり漫画向けの端末を出して漫画を沢山売るような体勢を作るのがいいんじゃないかって気がします。

(そういや過去の電子ブック端末も漫画を売ろうとはしてなかった気がするので、それが敗因なのかもね――とはいえ、漫画の単行本は安価なのでそれで売上を上げるのは大変なのですが)

 その意味ではKindleは流行らない気がしますけど(漫画を読むには不十分だから)、ペーパーバック作品に近い「ライトノベル」を大量にリリースできれば需要はあるのかもしれません。

 もっとも、ライトノベルのカラー表紙/口絵に対する需要が大きいのであれば、やっぱり売れないでしょうけれど。

(つづき:米国の書籍の値段やエージェントについて

*1:また、根拠もなく「アメリカはよくて、日本はダメ」という前提で語っていることが多いのも信憑性が薄く感じる理由です。