電子ブックが普及しないのはコンテンツの数が少ないから――というのは本当だろうか?
電子ブックが普及しないのはコンテンツの数が少ないから――というのは本当だろうか?
「電子ブックが普及しないのはコンテンツの数が少ないから」と言われることがあるけれど、それは果たして本当なんだろうか。ちょっと考えてみた。
仮に全書籍が同価格で電子ブック化されていたとして、果たして電子ブック版を買う人はどれくらいいるのかな?
快適に読むために電子ブック端末が必要だとすると*1、その端末代が余分にかかる――これは(無視されがちだけど)音楽や映像作品などとの大きな違いだよね。余分な出費を正当化するにはそれだけのメリットが必要なのだけれど、電子ブックはそれを提供しているのか――というのが大きな疑問の1つ*2。
電子ブックは通常より2割安い価格で提供されていて*3、電子ブック端末が3万円程度と仮定しよう。この場合は15万円分の書籍を買ったときに採算がとれる。
日本の出版物(書籍と雑誌)の1年間の売上は2兆円程度とのことで*4、購入人口を1億人と仮定すれば2万円、5000万人と仮定すれば4万円が1人が1年間に購入する出版物の金額になる――つまり、4年~7年くらい使わないと元はとれないわけだ。だとすれば「電子ブックは安価だから」という理由で売るのは難しいんじゃないかな*5。
あるいは1年間に15万円以上書籍を購入する人にはメリットがあるので買う可能性が高いと思われるのだけれど、そんな人はどれくらいいるんでしょうかね。
――とか考えていると、仮に全部の出版物が電子化されてもまあざっくり言って紙媒体の1/10も売れればいい方じゃないの? という感じがするわけです*6。
電子ブックがより売れるようになるには
- 紙媒体を読んでいなかった人に提供する
- 紙媒体にはないメリットを提供する*7
――ことが必要なんだけど、本当にそれを提供できるのかなと。
「紙媒体の本をそのまま電子化すりゃいいじゃん」と言う人は多いけど、それじゃあ上記のようなものは提供できないでしょ?
また上記を提供するのにコストがかかっていてはいけないわけで――なにしろ紙媒体に比べると相当少ない数しか見込めないわけだから――どうやって低コストで付加価値を付けて電子化するかが問われるのでしょうけれど。
出版社がケータイ向けに積極的なのは「読んでいなかった人」が読んでいることが分かったから。ちなみにケータイでは紙媒体で出ているものが全て配信されているわけではないのにちゃんと売れているわけだから「新刊を配信しないのが悪い」という主張は間違っていることが分かるよね。
*1:PCやケータイでいいのであれば現状でも充分普及してるけど、使われてないよね。
*2:電子ブックのメリットについてはそのうち考えてみる。
*3:なんかAmazonが2割以上安くしろと言ってるとか聞いたので、いちおう目安として。
*4:いや、2兆円は割ったんだっけか。
*5:なので、前にも書いたとおり「安価」を売りにするのは難しいと思ってるし、しないほうがいいでしょう。
*6:端末が500万~1000万台普及して、それらを使ってる人が全部電子媒体を買うと仮定してそれくらい。とはいえポッド出版が公表している数を見ると、これでも相当過大評価な気がしますけれど……。実際には1/50くらいかねぇ。
*7:これについてはあとで書きたいと思ってる。