無料のウェブ漫画を単行本の収益で回収できるの?

無料のウェブ漫画を単行本の収益で回収できるの?

 いちおう漫画雑誌がウェブに移行しない理由の補足になります。

(またウェブ漫画に限らず、描き下ろしなり雑誌連載にも関係するネタでもあります)

前提条件

  • 160ページ
    • 32ページ連載×5ヶ月
    • 販売時には色々ページが増えて*1168か176ページになるでしょう
  • 原稿料はページ1万円
  • 定価500円
    • 出版社収入は7掛けとして350円
  • 初版1万部*2

 典型的なケースを想定してみましたが、実際にはどうでしょうね。

初版収支

  • 漫画家の収入 210万円
    • 原稿料 160万円(160ページ×1万円)
    • 印税 50万円
  • 印刷代 50万円
  • 出版社の収入 ~350万円(350円×~1万部)
    • 固定費の260万円を回収するには実売率が75%(7500部)を越える必要がある
  • 出版社利益 ~90万円
    • 5ヶ月の連載で割ると~18万円/月

 これだけ見るとまるで儲かりそうにありません。

増刷3千部

  • 漫画家の収入 15万円(印税のみ)
  • 印刷代 15万円
  • 出版社の収入 ~105万円(350円×~3千部)
    • 増刷分の実売率が30%(900部)を越えれば固定費が回収できる
  • 出版社利益 ~75万円

 ザックリと追加で千部以上売れそうなら増刷しそうな感じですし、それでようやく利益が出そうです。

出版社の経費について

  • 5作品で90万円/月をまかなえそう
    • 5作品あれば毎月単行本も出せる
  • 休載の可能性を考えると6作品以上欲しい
  • 連載ページ数が少ない場合はさらに作品数が必要

 これから考えると、担当編集1人で6作品以上担当してる可能性が高そうです。

感想

  • 初版1万部程度だと完売しても厳しい
    • 初版2万部が堅い作品が1作品くらいないとキツそう
    • 雑誌で収入があればその分を出版社の経費に回せるので、初版1万部でもなんとかなりそう
  • 上記の試算では1万部売れた場合の売上の4割強が漫画家の収入なので、それなりに優遇されているとも言える(出版社はそれなりに投資している)
  • 原稿料がもうちょっと安ければ出版社的には楽、高いと厳しい*3
    • 裏サンデーは原稿料が安いんじゃないのかな?とは思ってる*4
  • 4コマ系の単行本のように112ページ700円程度なら回収しやすい*5
    • ただし普通の単行本より売れない可能性が高い
    • また単行本の出る頻度が減るため沢山作品を抱える必要がある

 まあこんなところでしょうか。全然儲かりそうにないですね。

 とはいえヒット作が出れば一気に収益が改善されるはずです。が、ヒット作が出るまで相当な投資が必要だと思われます*6

 また、最近は定価が600円くらいの単行本もありますので、その場合ならもうちょっとなんとかなりそうです。

*1:中表紙とか目次とか奥付とか色々あるからね。

*2:標準的な初版部数は知らないので、妥当かは分かりません。

*3:初版2万部が堅くないと原稿料を上げるのは難しいと予想。

*4:上記でも分かるとおり、連載を増やさないのは原稿料を出すのが大変だからだし。

*5:ちゃんと計算した方がよい?

*6:運良く最初にヒット作が出れば別ですが。