『創』2010年2月号の簡素な感想。
『創』2010年2月号の簡素な感想。
適当に引用しますので、気になった方は購入をお勧めします。
近場で売ってないなら通販もありますし。
植田康夫 (略)紙媒体の統計が、ずっと流布されていますが、実際は、電子辞書などは、けっこうシェアは増えている。だから、そういうものも含めて、トータルに統計をとらないといけないのではないか。(略)p.28
――これについてd:id:mohnoさんが何度か指摘しているものですね。僕もそう思います。
松田哲夫 (略)『読めそうで読めない間違いやすい漢字』(出口宗和著/二見書房)は、実は柳の下の三匹目のどじょうなのに、一番になった。コンビニ本という、普通は書店で売るつもりのない本がミリオンになった。(略)p.30
――そういえば出版物販売のコンビニのシェアはどれくらいなんだろう。
欧米と比較する人も多いけど、果たして欧米は日本のようにコンビニで様々な書籍・雑誌を買えるのか、いつも疑問に思っている。
(少なくとも出版流通については日本は欧米と比較できないくらい優れているでしょ?)
p.31-33
雑誌は宝島社が強いらしい。他、雑誌についていろいろ書かれています。
p.33-34
新書はビジネス書・自己啓発書が隆盛で、教養的なものやジャーナリズム的なものが減っているとのこと。
最近新書を買わなくなった(売場に行かなくなった)のはそのせいかもしれない、とかちょっと思った。
清田義昭 だから松田さんたちがやったときは、早かったのですよ。確かに、紙の地図は売れなくなったけど、カーナビが代替しているし、インターネットでも読める。それから、電子書籍というジャンルが出来て、ケータイでも読める、あるいは電子辞書でも読める。例えば料理のレシピもインターネットでもケータイでも使えるようになった。(略)p.38
――そうそう、地図からカーナビ(ケータイナビ)へ、って流れも忘れがち。
かように電子化に向いてるものは電子書籍以外の形でどんどん電子化されてるわけですよ。そこであえて「電子ブック」である意義はあるのか、ってのが疑問なわけで。
だから僕はメリットがあるであろう形を考えるようにしているつもりなのだけれど。ネット世間では「電子ブック化されればそれだけで素晴らしい世界になるはず」という妄想が激しくてげんなりする。
(略)ただしこの雑誌でも取材モノは少なくなって、座談会などお手軽なものばかり。これには金をかけたくないというコストカットが一面の真実であって、もう一面は読者の高齢化だ。おそらく平均読者層が70歳を越えていて、座談会や対談の方が読みやすいという両面があるのではないか。(略)p.42(佐野眞一)
――取材をせずに座談会や対談でお茶を濁しがち、というのはありそうです(新書でもそういうのが増えてるし)。
ただ、高齢化はあまり関係ない気がしてます。ウェブでも何かをきちんと調査・取材した記事よりも、思いつきの与太話のほうが人気がありますしね。
p.44-93
「講談社」「小学館」「集英社」「新潮社」「文藝春秋」「マガジンハウス」「光文社」について。
これは別にセールスのトップから選んでいるわけではないみたいだけど*1。ここになくて大きいのは角川グループかな。
トップの10社をあわせても36%のシェアしかないという競争の激しい業界というか、中小零細企業がたくさんあるというか。まあ大手ですら「大企業」というには規模が小さいもんねぇ(売上も社員数も)。
ところで、各出版社についての記事を読んでいると、自分がいかに出版物の一部しか見ていないかがよく分かりました。僕は電子ブックのことを話すときは主に「漫画」「漫画雑誌」と「文芸」「新書」くらいしか念頭になかったりするのですが(少なくともそう意識して書いている)、それだと出版市場の半分あるかどうかなんですよね*2。残りについてはまるっきり無視しているわけです。
記事では僕が知らない雑誌や書籍の動向について取り上げられているのですが、これらは電子ブック化できないだろうと思うのも結構あるわけですよ。
分かりやすい例だと「付録付きの雑誌・書籍(分冊百科も含む)」ですね。これは電子化しても意味はないでしょ?
他にも「学年誌・学習誌」「女子中学生をターゲットにした雑誌」なんかはターゲットにとっては紙媒体のほうが安くて購入しやすいわけです。おそらく高校生以下むけは紙媒体のほうが良いという判断になるのではないかな。ひょっとしたら大学生もそう。
そう考えていくと、電子化に向いている出版物ってネット世間が想像しているより少ないんじゃないのかな? という気がするわけですよ。
ちなみに雑誌については漫画と文芸以外は電子ブックには向いてないと思ってますが*3、購入層を考えると電子ブック化してメリットがあるのは本当にごく少数でしょうしね。
ネット配信についてはやはり漫画が積極的な印象ですね*4。当然海外向けも視野に入れてるみたいです。
そもそも日本の出版物は安いしその中でも漫画はアホみたいに安いので、紙媒体のままの価格で海外で配信できればそれだけで海外にとっては「価格破壊」なんですよね。そう考えると「漫画向きな端末を開発して海外で売るのがいいんじゃないの?」って気もします――まあ、海外の漫画市場をどれだけ開拓できるのか、ってのもあるでしょうけれど。
追記(2006-02-26)
b:id:mohno [浅倉卓司, 出版, 創, 後で書く] 「コンビニ」< http://yaplog.jp/er3205u/archive/5 によれば21.9%(2006年)。「ウェブでも何かをきちんと調査・取材した記事よりも、思いつきの与太話のほうが人気」<苦笑。米のコンビニはペーパーバックは売っていた気がします。 [2010/02/25]
コンビニの件、ありがとうございます。出版全体で21.9%ということは、コンビニの扱いがほぼ雑誌であることからすると、雑誌の販売は40%近くがコンビニになりそうです。結構大きいですね。
(コンビニでスペースを割いているだけのことはある、ということでしょう)
そしてコンビニで扱っている雑誌(漫画以外)は電子ブックには向かないし、メリットもあまりなさそうな気がしています。
アメリカのコンビニの件ですが「ペーパーバックは」ということは、雑誌の取り扱いはないのかちょっと気になりました(日本は雑誌と書籍が同じ流通なので特殊らしいですので)。
そうそう、せっかく書籍の販売金額と部数が出ていたので、1冊当たりの平均単価を計算してみました。
- 漫画 約556円
まあ、予想通りですね。
- 文庫 約632円
これも予想通りですね。
- BOOK 約1,264円
これが予想以上に安かったです。これは新書が多くを占めてるせいでしょうかね? それでも安価な漫画や文庫を除いた平均がここまで安くなるとは思っていなかったので、ちょっとびっくりしました。
これではKindleで「これから書籍は千円で買えますよ!」とか言ってもあまり魅力的じゃないはずで、アメリカと同じビジネスモデルで商売はできないですよね……。